令和7年度 施政方針
2025年02月10日掲載
令和7年度の施政方針を掲載しています。
1 はじめに
令和7年度の一般会計予算をはじめとする予算関係議案の御審議をお願いするに当たりまして、私の市政運営の基本的姿勢と重点施策を申し上げます。
昨年を振り返りますと、激甚化する自然災害や長引く物価高騰、加速する少子高齢化など、地方を取り巻く環境はさらに厳しさを増した一年となりました。
一方、景気は緩やかな回復傾向となり、雇用や所得環境にも明るい兆しが見られるなど、コロナ禍からの復興を感じられる年となりました。
自然災害については、昨年1月に発生した能登半島地震、全国各地で起こった線状降水帯等による大雨被害、そして、市内においても11月の大雨で床上浸水や土砂流出といった被害が生じるなど、あらためて地震や豪雨災害の恐ろしさを感じた一年となりました。
被害を最小限に抑え、かけがえのない市民の生命、財産を守るため、今後も引き続き、防災・減災対策を強化し、市民の安全を確保するための取組を進めていく必要性を強く感じております。
経済面では、長引く物価高騰により、多くの家庭や事業者にとって厳しい状況が続いております。
地域経済の活性化と市民生活の安定を図るため、富士宮市では、これまでもプレミアム付き商品券の発行をはじめとする様々な物価高騰対策を実施してまいりました。
しかしながら、今もなお、物価高騰は収まる気配を見せないことから、令和7年度も第5弾となるプレミアム率50%のプレミアム付き商品券の発行を予定するなど、今後も物価高騰の影響を受けている市民の皆さまの生活を下支えすることを最優先に、施策を展開してまいります。
加速する少子高齢化の進行は、経済、市民生活、医療・福祉、まちづくりなど各分野に大きな影響を及ぼし、地域社会の活力を低下させる大きな要因となることが懸念されます。
こうした状況の中、将来にわたり富士宮市が発展していくためには、未来を担うこども達や子育て世代を社会全体で支え、将来に明るい希望を持てる“まち”にしていかなければなりません。
また、高齢者の皆さまが、いきいきと安心して暮らせる環境を整えていかなければなりません。
地域の魅力を高めるための施策を強化し、こども達や子育て世代が住みやすいと感じる環境を整えるため、教育環境の整備や子育て支援の充実を図っていくとともに、高齢者の皆さまに対しましても、介護サービスや地域包括ケアシステムの充実など、多様な支援やサービスを組み合わせた支援体制の整備に努めてまいります。
富士宮市は、新型コロナウイルス感染症の収束後、さらに海外から注目される“まち”となりました。
現在、世界遺産富士山に相応しい、美しく品格のあるまちづくりを行うため、「清流の美」、「空間の美」、「庭園の美」をキーワードに、心が癒されるまちの具現化を図っています。
地域に誇りを持てるまちづくり、地域の自然や歴史・文化を生かした郷土愛の醸成を図る取組を進め、誰もが住みたい、いつまでも住み続けたいと思える“まち”の実現を目指して、今後も様々な角度からのアプローチを進めてまいります。
さて、将来都市像「富士山の恵みを活かした 元気に輝く国際文化都市」を掲げて取り組んでまいりました「第5次富士宮市 総合計画」も、令和7年度で最終年度を迎えます。
令和7年度は、計画に掲げた政策や施策の総仕上げの年とするとともに、これからの富士宮市の明るい未来を見据え、新たな時代へつなげていくためのまちづくりをさらに進めていかなければならないと考えております。
施策の進捗状況や成果を総点検し、必要な見直しを行いながら着実な推進を図るとともに、残された課題や新たに発生した課題、変化する社会情勢、多様化する市民ニーズを的確に捉え、次期総合計画へのスムーズな移行を進めてまいります。
この一年も、長引く物価高騰や国内外における不安定な社会情勢の中での難しい市政運営の舵取りとなりますが、人口が減少する時代にあっても、市民の皆さまが心の豊かさと幸福を実感でき、いつまでも安心して住み続けたいと思える“まち”を創るため、これまで以上に情熱を持って、今後の市政運営に取り組んでまいります。
2 市政運営の基本的姿勢
それでは、令和7年度の市政運営の基本的姿勢について申し上げます。
はじめに、我が国の経済は、高水準の賃上げや史上最高水準となる企業の設備投資による内需が牽引する形で、日本の景気は全体的に緩やかな回復傾向を続けております。
先行きについても、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクはあるものの、雇用・所得環境が改善する中、「デフレ完全脱却のための総合経済対策」の効果もあり、今後も緩やかな回復基調が続くと期待されています。
令和7年度の国の予算編成における基本方針では、現下の物価高に対応しつつ、デフレを脱却し、新たなステージとなる「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への移行を確実にすることを目指して、物価上昇を上回る賃金上昇の普及と定着、新たな地方創生施策の展開、官民連携による投資の拡大、防災・減災及び国土強靱化の推進、充実した少子化・こども政策の着実な実施など、重要政策課題に必要な予算措置を講ずることによってメリハリの効いた予算編成を行うとしています。
本市としましても、こうした国の動向を注視しつつ、時代の潮流を的確に捉えるための情報収集や前例にとらわれない独自の取組を果敢に進めていきたいと考えております。
長引く物価高騰への対策や本市においても重要施策となっている少子化対策、こども施策、脱炭素社会の実現に向けた各種取組の強化、自治体DXの推進、防災・減災対策をはじめとする様々な施策について、今後も積極的に取り組んでまいります。
それでは、以下、第5次富士宮市総合計画にあります三つの重点取組に沿って、令和7年度重点施策の大要を申し上げます。
3 令和7年度重点施策
第5次富士宮市総合計画では、将来都市像に相応しい魅力溢れるまちづくりを進めるために、総力を挙げて取り組むべきテーマを「三つの重点取組」として掲げております。
特に、令和7年度は、第5次富士宮市総合計画の最終年度となることから、本市が掲げる将来都市像や基本目標の達成に向けて、各種施策を積極的かつ強力に推進してまいります。
それでは、令和7年度における「三つの重点取組」について、具体的に申し上げます。
まずは、重点取組1「恵み豊かな未来づくり~世界遺産のまちづくり~」について申し上げます。
はじめに、「世界遺産のまちづくりプロジェクト」についてであります。
世界遺産のまちに相応しい、中心市街地や各構成資産などの整備を、引き続き進めてまいります。
中心市街地の整備については“世界遺産 富士山”のあるまちに恥じない美しく品格のあるまちづくりを行うため、「清流の美」、「空間の美」、「庭園の美」をキーワードに、豊かな自然を生かした癒しの空間の創出を図るとともに、門前町として回遊性のある賑わいのあるまちづくりを目指します。
具体的には、令和6年度末に改定予定の「世界遺産のまちづくり整備基本構想」に基づき、富士山本宮浅間大社周辺の整備計画を令和8年度にかけて策定してまいります。
各構成資産の整備については、白糸ノ滝エリアでは、「名勝及び天然記念物白糸ノ滝整備基本計画」に基づき、音止の滝左岸に広がる樹林帯を広葉樹林帯に整備するための取組を進めます。
また、村山浅間神社では、安全確保のため、階段へ手摺りを設置するとともに、修験道・神社エリアの基本設計を行います。
市内にある文化財を生かしたまちづくりについては、地域社会総がかりで文化財の保存・活用を図っていくことを目的に、これまで進めてきた「文化財保存活用地域計画」を取りまとめ、文化庁による計画の認定を目指します。
そのほか、定住集落跡の例としては日本最古級とされている縄文時代草創期の遺跡 大鹿窪遺跡の整備については、史跡整備工事が令和6年度で完了することから、縄文文化を体感できる史跡として活用してまいります。
富士山の玄関口である富士宮駅前広場等整備については、景観とユニバーサルデザインに配慮した快適で機能的な空間とするため、待合所の設置や照明のLED化工事、サイン等の整備を行うほか、市立病院北側の一般市道錦町1号線歩道整備工事を進めます。
白糸自然公園の整備については、さらに多くの利用者に訪れていただけるよう、公園全体の基本計画の見直しを行うとともに、雄大な富士山を背景とした迫力ある大型ステージを設置するための設計に着手します。
商店街活性化への取組については、商店街が実施するイベントへの補助や空き店舗等への出店者に対する支援を引き続き実施します。
次に、「世界に飛躍する国際文化都市プロジェクト」についてであります。
世界に飛躍する国際文化都市を目指し、国内外からの誘客を進めるとともに、おもてなしの対応と広域的な取組を進めます。
観光誘客活動については、増加する訪日外国人観光客や国内旅行需要を取り込むため、本市ならではの魅力や体験コンテンツの情報などを国内外に発信してまいります。
また、変化する社会情勢などを踏まえ、新たな観光基本計画を策定します。
そのほか、静岡県に対しましては、富士山5合目レストハウスの早期整備はもとより、質の高い施設となるよう、引き続き強く要望してまいります。
新稲子川温泉ユー・トリオについては、プール棟跡地にキャンプ場を整備するとともに、積極的な情報発信を行います。
本市の懸案であります宿泊施設等の誘致については、国内外からの観光客が滞在できる環境整備と多くの集客交流が見込まれる場の確保に向けて、宿泊事業者に対する誘致活動を行います。
スポーツ大会の誘致については、プロバスケットボールチーム「ベルテックス静岡」のプレシーズンゲームを開催するほか、卓球Tリーグをはじめとするプロ及び実業団チームによる大会を開催します。
国際化への取組については、令和7年度はサンタモニカ市と姉妹都市提携を締結して50年の記念の年を迎えることから、4月にはサンタモニカ市から皆さまをお迎えし、記念式典などを行い、50年の長きにわたる交流を称えるとともに、今後の更なる交流・連携の促進に向けて誓いを交わします。
そのほか、友好交流関係都市との都市交流を継続するとともに、中学生を対象とした“世界にはばたくこどもたち育成事業”、高校生を対象とした“未来を担う高校生人材育成事業”についても、引き続き実施してまいります。
次に、「富士山後世(こうせい)継承(けいしょう)プロジェクト」についてであります。
富士山をはじめとする、このまちが誇る豊かな自然や景観、歴史、文化を守り、後世へ引き継ぐための取組を進めてまいります。
富士山の文化的価値を広く市内外に周知する世界遺産の推進については、令和6年度末に世界遺産文化交流都市提携を締結する予定のネパール マンダン・デウプール自治体との交流を深めるため、両市でのパネル写真展の開催や国際交流フェスティバルにおける文化の紹介、オンラインによる教育交流などを行います。
市史編さんについては、民俗編及び通史編Ⅰを刊行するとともに、次の通史編Ⅱ・Ⅲの刊行に向けて調査及び執筆を行います。
市民の皆さまに、世代を超えて郷土の自然や歴史、文化を学び、郷土に誇りや愛着を持ってもらうため、また、本市を訪れる人々にも本市の魅力に触れてもらうきっかけづくりとするための施設を目指す(仮称)郷土史博物館については、整備に向けた基本計画の策定を行います。
この基本計画は、博物館の今後の設計・工事を進めるための基礎となる計画で、基本構想で示した整備の方法、場所や機能、規模、展示内容、概算工事費などについて、内容等の課題や条件等の整理を行い、それらを精査する中で、より具体的な案を示すものとなります。
基本計画の策定に当たっては、策定委員会を組織し、専門家や市民の声を取り入れながら、策定を進めてまいります。
次に、「自然環境と共生した持続可能なまちづくりプロジェクト」についてであります。
ゼロカーボンシティの実現を目指し、富士山のふもとで、自然環境と共生した持続可能なまちづくりを進めます。
ゼロカーボンシティの推進については、環境や社会情勢の変化に対応するため、ゼロカーボン推進戦略の中間見直しを行うとともに、各家庭や事業所向け創エネ・蓄エネ機器設置に対する補助を継続します。
また、公共施設への再生可能エネルギーの導入を推進するため、発電事業者が太陽光発電システムを設置し、建物所有者に電気を販売するPPAモデルを活用して富士根交流センターに太陽光 発電設備及び蓄電池を設置し、再生可能エネルギーを最大限活用するとともに、災害時にも備えます。
公共施設のLED化については、上野会館及び南部公民館の照明をLED化することで、省エネルギー対策を進めます。
そのほか、脱炭素社会の実現に向けて、市有林の森林整備の効果による二酸化炭素吸収量を算定し、J-クレジットの登録認証を目指します。
森林環境整備事業については、森林環境譲与税を活用し、市内の森林整備の推進や人材育成、木材の利用普及啓発を行います。
具体的には、令和7年度から、新たに高性能林業機械の導入費補助を行うほか、新生児のいる家庭への市内間伐材を活用した写真立ての贈呈や児童館などへの木製玩具の配置を行います。
次に、重点取組2「いきいき元気な未来づくり~安全・安心なまちづくり~」について申し上げます。
まずは、「元気はつらつ健康長寿プロジェクト」についてであります。
いつまでも健康でいられるための健康増進や疾病・介護予防の取組を進めるとともに、市立病院をはじめとする地域医療との連携強化を図ります。
健康づくりへの取組については、各種がん検診などを積極的に周知し、市民の皆さまが健康長寿でいられるよう努めるほか、自転車に触れる機会を提供し、自転車を利用する意識を向上させる取組や、継続してラジオ体操に取り組む自治会に対する奨励金の交付など、市民の健康づくりを推進します。
質の高い医療サービスの提供については、地域の基幹病院である市立病院の機能の整備及び充実を図ります。
具体的には、市立病院の医師及び看護師の確保を図るため、医学生・看護学生の修学資金貸与事業を継続するとともに、レントゲンシステムなどの高度医療機器を更新します。
市民の皆さまが、住み慣れた地域で健康的に暮らすためには、地域医療の確保は極めて重要であります。
現在、地域医療支援病院としての役割を担う市立病院の現状分析と医療環境のあり方について検討を行っておりますが、医療技術の進歩に伴う医療環境の整備や施設の老朽化への対応の必要性がより明確になってくることから、市立病院の建て替えも視野に入れた施設更新の方向性について検討を進めます。
そのほか、救急医療センターの安定的運営を確保するための取組や民間の二次救急医療機関の医療機器整備に対する助成を行います。
地域福祉への取組については、住み慣れた地域で安心して生活できるようにするため、重層的支援体制の推進、地域のネットワークづくり、地域を担う人づくりによる地域福祉の充実を図るとともに、民・産・学・官の協働による地域福祉活動の推進を図るため、令和8年度から5年間を計画期間とする地域福祉推進計画を策定します。
また、令和7年度は、富士宮市手話言語条例の制定後10周年を迎えることから、障がい者への理解を深めるための記念式典を開催します。
スポーツによる健康づくりと人々の交流機会の創出については、体育施設整備として、ストック適正化計画に基づき、市民テニスコートの人工芝の張り替えと照明のLED化に向けた設計を行います。
次に、「災害に負けない強靱なまちづくりプロジェクト」についてであります。
多様な災害から、市民の生命や財産を守り、被害を最小化するための強靱なまちづくりを目指します。
防災対策への取組については、令和6年1月の能登半島地震や8月の南海トラフ地震臨時情報の発表、市内における11月の記録的豪雨などにより、市民の防災対策への関心が高まっていることから、最新の土砂災害警戒区域や河川浸水想定区域等を掲載した「防災マップ」を作成し、全戸に配布します。
なお、令和6年度末に「富士宮市富士山火山避難計画」を見直しますので、令和7年度には、それを受けて溶岩流等の噴火前の避難先の指定などを市民に周知します。
また、「防災マップ」にも、噴火前に避難が必要な避難対象エリア別の具体的な避難対策を掲載します。
そのほか、富士根交流センターの隣地に防災倉庫を設置し、災害に備えて備蓄品等を配備します。
TOUKAI-0事業については、令和6年度は想定を上回る申し込みがあったことから、「わが家の専門家診断」を令和7年度も継続して行い、木造住宅等の耐震化を支援します。
公共施設やインフラの強靱化については、公共施設の耐震化や安全で快適な道路整備に継続して取り組みます。
具体的には、主要な機械及び電気設備についての劣化状況調査を継続して行い、建築物と併せて計画的かつ効率的な改修を実施するとともに、道路等のインフラについても、令和6年度策定の短期保全計画に基づき、計画的かつ効率的な改修を行います。
利用者の安全・安心、利便性の向上を図るために実施する市民文化会館の耐震化、長寿命化及び環境改善を併せたリニューアル工事については、令和8年1月の工事完了を目指します。
また、東小学校管理教室棟改築工事、黒田小学校屋内運動場 改築に向けた基本設計及び実施設計とプール解体工事、中央消防署芝川分署の建設に向けた基本設計及び実施設計も行います。
清掃センターについては、焼却施設保全工事に着手し、老朽化した電気設備などの主要機器を計画的に更新することによる安定したごみ処理体制の維持を図ります。
インフラ整備については、都市計画道路田中青木線の整備、岳南北部地区幹線道路整備を引き続き進めます。
県道の清水富士宮線、富士宮芝川線、上稲子長貫線、大坂富士宮線及び三沢富士宮線の整備については、県等の関係機関へ強く要望し、一日も早い完成を目指すとともに、国道469号や新 広域道路交通計画に位置付けられた富士富士宮道路の整備促進についても、関係する市町と連携して、国・県等の関係機関へ要望してまいります。
併せて、市道及び橋りょうの長寿命化については、舗装及び橋りょうの安全確保のため、これまでの事後保全対応とともに一部を計画的で予防的な対応に転換し、修繕費用のコスト削減を図ります。
そのほか、舗装管理の効率化を図るため、路面状況把握システムを導入し、路面状況及び路盤、車両の通行量を加味しながら補修してまいります。
市街地の浸水被害の軽減を図る取組については、雨水対策として、令和7年度に内水(ないすい)浸水(しんすい)想定区域図が完成することから、淀師地区の管渠新設工事等の実施に向けた雨水管理総合計画を策定します。
次に、「地域コミュニティ充実プロジェクト」についてであります。
全ての地域において、誰もが住み続けられるようコミュニティの充実を図ります。
富士根交流センターについては、令和8年2月の供用開始を目指し、建設工事及び備品搬入等の開館に向けた準備を進めます。
公共交通については、今後に向けた新たな地域公共交通計画を策定するとともに、公共交通事業者の運転手確保を支援するため、事業者への第二種運転免許取得費の助成を行います。
また、市街化調整区域に存在する空き店舗等を利活用して事業を行う人に対する補助も継続し、集落拠点の機能強化に努めます。
多文化共生社会の実現については、誰もが安心して住み続けることができるコミュニティの充実を図るため、引き続き「やさしい日本語」講座や外国人向け「日本語教室」を開催します。
なお、今年は、広島市、長崎市へ原爆が投下されてから80年の節目の年となります。
本市は、昭和59年に核兵器の廃絶と恒久平和の実現を願い、富士山を平和のシンボルとする「核兵器廃絶平和都市」を宣言しましたが、その趣旨を踏まえ、市民の平和への意識の高揚を 図るため、令和7年度は被爆地長崎市への中学生の派遣を実施します。
次に、重点取組3「誰もが輝く未来づくり~人口減少社会に打ち克つまちづくり~」について申し上げます。
まずは、「結婚・出産・子育ての希望実現プロジェクト」についてであります。
結婚・出産・子育ての希望を実現させるとともに、切れ目ない支援を行い、子育てしやすい社会環境の整備を図ります。
子育て世帯に対する医療費の負担軽減の取組については、昨年10月からスタートした、18歳までのこどもの通院の自己負担を0円とする、こども医療費の完全無償化を通年で実施します。
不妊・不育症治療に係る医療費についても助成を継続し、妊娠・出産・子育ての切れ目ない支援に努めます。
また、結婚を希望する人への取組については、出会いを創出する機会を増やすためのセミナー開催や勤労者が出会い・交流できるイベントの開催、結婚に伴う新生活のスタートアップに掛かる費用を支援する結婚新生活支援事業を、引き続き実施します。
そのほか、誰もが身近で楽しく過ごせる場所、安全・安心に楽しめる憩いの場を創出するため、公園の整備を進めます。
具体的には、城山公園の整備については、野球場のバックネット裏の本部席とダッグアウトの更新や、園路、グラウンドの整備を行い、令和8年度の完成を目指します。
令和6年度に大型複合遊具の工事に着手した外神東公園については、既存遊具の移設による集約工事と駐車場及びイベント広場の詳細設計を行います。
子育て支援については、退院直後の母子に対して心身のケアや育児のサポート等を行い、産後も安心して子育てができる支援体制の確保を行う産後ケア事業の利用者が増えていることから、事業費を拡充し、育児支援の充実を図ります。
また、物価高騰が続いていることから、引き続き小・中学校、公立・私立(わたくしりつ)保育所等における給食賄材料費のうち、物価高騰分を市が補てんすることにより、保護者の経済的負担を軽減します。
なお、学校給食費の完全無償化については、全国市長会等を 通じて国に強く働きかけを行ってまいります。
保育環境の改善に向けた取組については、保育士確保イベントの開催や人材確保及び就業支援に取り組むほか、保育士確保のための補助を小規模保育所まで拡大します。
また、公立保育園及びあすなろ園のトイレ洋式化にも取り組みます。
そのほか、親の就労要件を問わずに時間単位で柔軟に利用できる新たな通園制度「こども誰でも通園制度」の令和8年度からの本格稼働に向けて、令和7年度は試行をはじめます。
少子化に対する社会の意識改革への取組については、父親の育児参画応援のための冊子「ミヤパパBOOK」の配布や、企業経営者・従業員向けの講座、育児中の父親同士が話し合う場を設けるなど、子育て世代を応援していきます。
本市では、こども施策を総合的かつ強力に推進するため、令和6年度にこども家庭統括監を新設するとともに、「こども・若者支援推進本部」を立ち上げ、保健福祉部及び教育部が一体となって“発達障害等の気になる子”、“不登校”、“医療的ケア児”、“ヤングケアラー”及び“ひきこもり”などの課題について、現地調査や課題整理を行ってまいりました。
令和7年度は、それらの課題解決に向けた具体的な企画立案を進めてまいります。
次に、「女性が輝く、さくや姫プロジェクト」についてであります。
未来に向けて、女性が個性や能力を最大限発揮できる環境づくりに努めてまいります。
女性の活躍推進については、女性応援会議で広く意見を聴き、女性の活躍を応援するための施策を進めます。
具体的には、社会における女性活躍の機運醸成を図るための講演会や女性の創業支援セミナー等を開催するなど、女性が活躍する環境づくりを進めます。
また、子育て中の母親の目線から、富士宮市の様々な魅力を 発信するハハラッチ事業も継続します。
男女共同参画の推進については、第4次男女共同参画プランを策定するとともに、性別に関わりなく個性や能力が尊重され、誰もが自分らしく生きられる社会を目指し、ジェンダー平等や LGBTQに関する啓発を行います。
次に、「ここで働き、ここに住むプロジェクト」についてであります。
富士山の恵みを生かした産業振興とこのまちで生き生きと働くことのできる場所の創出を図ることにより、こども達が夢や希望を持ち続け、このまちを選び住んでもらうための取組を進めてまいります。
企業誘致・留置への取組については、人口減少社会への対応や更なる産業基盤の強化に向けた地域産業の活性化、雇用の場の 確保を図るため、優良企業の新規進出及び事業拡大を継続して支援します。
また、市街化調整区域における地区計画制度を活用し、北部地域において民間主導による工業団地整備計画が提案されていますので、引き続き協議を進めてまいります。
そのほか、企業誘致の更なる促進を目的に、市内における企業立地の適地を把握するため、企業立地可能性調査を行い、積極的な企業誘致にも取り組みます。
中小企業等への支援については、富士宮商工会議所、芝川商工会、富士宮信用金庫及び富士宮市の4者の組織連携による多面的な総合相談窓口である「ビジネスコネクトふじのみや」による支援を継続してまいります。
また、近年課題となっている事業承継については、専用ポータルサイト等を活用し、具体的な支援を促進させるとともに、創業を考えている方のスタートアップについて伴走型の支援を行います。
住宅リフォーム宮クーポン事業については、事業費を拡充し、引き続き実施します。
UIJターン者の就業支援については、全ての高校生に対して「企業紹介ガイドブック」を配布するとともに、企業の求人情報を掲載したジョブマッチングサイトを活用し、市内事業所の魅力を発信することで首都圏などからのUIJターン希望者の就業を支援します。
農業振興については、耕作放棄地の拡大や担い手不足が深刻化する中、農作業の省力化や効率化に向けて、市内の農家がスマート農業を導入する際の費用を補助します。
そのほか、SDGsの視点を取り入れて眠っている労働力と地域社会のミスマッチを解消するため、「富士山SDGs人材 マッチングサイト」の運営も開始します。
移住・定住に向けた取組については、移住相談を通じて移住希望者のニーズを的確に把握するとともに、移住体験ツアーや 地域の人々と関わる機会を創出することにより、官民連携で移住者の増加に努めます。
次に、「みんながつながる関係人口創出プロジェクト」についてであります。
人口減少による課題の克服に向けて、様々な人が関わることで交流や連携を生み出す関係人口を創出し、地域の活性化を目指します。
関係人口の創出については、首都圏に向けてターゲットやテーマを絞ったシティセールスを実施するとともに、地域おこし協力隊活動の拡充を通じて、地域間の交流や地域活性化の充実を図ります。
また、若者がイベントやお試し出店などのチャレンジができる若者チャレンジ支援施設「CHILL IN(チリン)」においては、市内高校との連携や大学生の利用拡大を図り、地域の担い手となる「新たな力」につなげます。
ふじのみや寄附金事業については、ふるさと納税の募集及び市外の寄附者への返礼品の提供を行い、まちの魅力を効果的に発信します。
併せて、官民連携による地域課題の解決と地方創生のより一層の推進に向けて、企業版ふるさと納税についても積極的な活用を図ります。
次に、「人口減少社会に打ち克つスマート自治体プロジェクト」についてであります。
人口減少社会における行政サービスの更なる向上を図るため、行政のデジタル化を推進します。
市民サービスの向上につながる取組については、マイナンバーカード業務において、来庁者の申請書の記入負担を軽減する「申請書作成支援システム」を導入し、窓口の混雑緩和と待ち時間の短縮を図ります。
行政サービスの向上につながる取組については、他の自治体や民間の手法を有効活用するための外部コンサルティングを行い、業務の質の向上を目指します。
公立保育園及びあすなろ園については、保育支援システムを導入し、保育士の負担軽減及び保護者の利便性向上を図ります。
富士市及び富士宮市共同電算事業については、令和8年1月からの第3期共同電算の運用開始に向けて、システム等の更新作業を行うほか、国の推進する基幹システム標準化への移行に合わせて、移行可能なシステムのガバメントクラウドへの移行作業を実施します。
最後に、財政運営についてであります。
富士宮市では、これまで積極性と健全性が両立したメリハリのある財政運営に努めるとともに、将来負担に配慮した本市独自の財政規律を設定し、持続可能な財政運営の確立を目指して取り組んでまいりました。
その結果、財政の健全性を示す指標である「実質赤字比率」、「連結実質赤字比率」、「実質公債費比率」及び「将来負担比率」は全て適正な水準を維持しています。
市税については、令和5年度決算では、社会経済活動の回復が進み、コロナ禍前を上回ったものの、不確実性が高く、国からの交付金等についても今後の推移を注視していく必要があります。
そのような中、本市は、財政調整基金をはじめとする各種基金について、決算剰余金を活用した計画的な積立てを行っており、今後の財政需要や市債償還等に対応する財政基盤の強化にも努めているところであります。
令和7年度は、第5次富士宮市総合計画の最終年度となることから、現行計画の総仕上げの年となります。
同時に、次の10年を見据え、令和8年度から始まる第6次富士宮市総合計画がスムーズにスタートできるための助走に踏み出す年でもあります。
今後も、総合計画の目標値の達成を目指す事業や社会経済環境の変化に対応するための事業などについて、積極的に取り組んでまいります。
今後の財政運営については、物価高騰の影響がしばらく続くものと見込まれるとともに、急速な少子高齢化の進行や人口減少への対応、公共施設やインフラの老朽化対策、デジタル化の推進に伴う経費増加など様々な課題はありますが、財政の健全性に配慮しつつ、事業の選択と集中を図り、限られた財源を効率的かつ効果的に活用していくとともに、中長期的な視野に立った財政運営を行ってまいります。
4 おわりに
私は、常に「攻め」と「守り」をバランス良く進め、夢と希望を持って挑戦し続ければ、どんなに困難なことでも、そこから未来は開けると信じています。
戦国時代の武将 武田信玄は、その時代を代表する名将として知られておりますが、軍旗に掲げられた「風林火山」の精神は、現代社会においても多くの教訓を残してくれています。
「風」は、行動する時は、風のようにスピード感を持って速く動くことが重要である。
「林」は、何事にも準備を怠らず、冷静な判断のもと、焦らず落ち着いて行動することが重要である。
「火」は、大事な場面では、躊躇せず果敢に攻めることが重要である。
「山」は、一度決めた判断はむやみに変えたりせず、どっしりと構えて守り抜くことが重要である。
素早さと柔軟性を持ちながら、慎重で安定した行動を心掛け、攻撃的な戦略を取り入れつつも、揺るぎない基盤を築くことを表したこの「風林火山」の教えは、「攻め」と「守り」をバランス良く取りながら、急速に変化する時代の中で、地域の特性を生かした持続可能なまちづくりの実現に向けて貴重な指針になるものと考えます。
また、本年の干支は「乙巳(きのとみ)」であります。
植物の成長に例えるならば、「種子の殻を突き破り、芽を出す状態」を意味します。
この組み合わせから、「変化と新たな挑戦のエネルギーが高まる」という意味を持つ年とされています。
これまでの努力や準備が実を結びはじめ、勢いを増していく年、努力を重ね、大きな成果を得られる年にしていきたいと思っております。
“ふるさと”を形作っているものは、そこに暮らす私たち一人ひとりの思いであり、そこで働く人やそこを訪れる人とのふれあいであり、これまで築いてきた先人の知恵や努力、守り抜いてきた豊かな地域資源であります。
そして、次世代に誇れる美しい“ふるさと”を残していくためには、市民の皆さまと将来をともに語り合い、夢や希望の実現に向けて信念と情熱を持って取り組み、絶え間ない努力を積み重ねていくことが大切であると考えます。
『市民が郷土に幸せを感じ、郷土に誇りを持てるまちづくり』
『市民一人ひとりが輝けるまちづくり』
これが、私の目指す理想のまちづくりです。
失敗を恐れず、また課題を先送りせずに、市民の皆さまとともに様々な困難にも真摯に向き合い、克服していきたいと考えております。
令和7年度も、日本一の富士山のあるまちの市長として、自ら先頭に立ち、市民の皆さまとともに、更なる市政の発展に向けて力強く市政運営に邁進していく所存であります。
終わりに、未来に向けた魅力あるまちづくりの実現のために、市民の皆さま、そして議員各位の御理解と御支援をお願い申し上げ、令和7年度の施政方針といたします。
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令和7年度施政方針(PDF)
(PDF 84KB)
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企画部 企画戦略課 企画調整係
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